2020開幕戦ドキュメント 6月13日 兵庫ブルーサンダーズ対堺シュライクス

球音が帰ってきた―
2カ月延期となった開幕。待ちに待った野球。

「いつもの光景」

その日、球場に着くと久しぶりに見る光景が広がっていた。6月13日、三木防災公園野球場。キャッチボールの音、ノックの打球音、捕球音、そして選手の声が響く。準備のために慌ただしく球場外を走り回る選手やスタッフの姿も。
長らくSTAY HOMEしていた我々が聞くことができなかった音や見ることができなかったものが目の前に広がっていた。
30試合のうちの1試合といってしまえばそれまでだが、2020年初の公式戦。この試合は無観客試合ではあったが、選手の気合いの入り方も違う。

(試合前に素振りをする兵庫ブルーサンダーズの選手たち)

(ロングディーを行う堺シュライクスの選手たち)

兵庫ブルーサンダーズ・橋本大祐監督が「やっと始まる。全体練習がストップしている間でも選手がしっかり課題をもって取り組んでいたので、レベルアップしていた。若く楽しみな選手が多いのでリーグ優勝、そしてNPB指名される選手を育てたい」と話せば、

堺シュライクス・大西宏明監督は「本当に野球ができるか不安だったが、世の中が野球を求めていたのを実感していた。勝ち負けも大事だが暑い試合を見せたい」と語った。

(試合前に整列する兵庫ブルーサンダーズナイン)

(整列する堺シュライクスナイン)

(ホームプレートミーティングに臨む橋本監督と大西監督と審判団)

雨天の影響もあり、試合開始が10分前倒しされた。時折雨が強くなることもあったが、選手たちは溌溂としたプレーを見せていた。

(1回裏、盗塁を試みるもタッチアウトとなった兵庫・梶木翔馬)

(3回表、二塁打を放つ堺・佐藤将悟)

(6回裏、ホームインする兵庫・小山一樹)

試合はインターネットラジオ局「レディオバルーン」でインターネット配信された。

試合中には兵庫ブルーサンダーズ・清水健介投手がゲスト出演する一幕も。


(右手前が兵庫・清水健介)

試合は堺が1点リードしていた9回裏、兵庫が無死1、2塁のチャンスを作る。兵庫ベンチがにわかに盛り上がりを見せる。

(9回裏・仲瀬貴啓が野手選択で出塁し、盛り上がるベンチ)

しかし、堺のリリーフエース、河村将督が粘り、試合は2-1で堺が勝利した。

(9回裏、最後の打者を併殺で打ち取り、恒例のガッツポーズを見せる堺・河村将督)

 

 

こうして2カ月遅れの開幕戦は幕を閉じた。

開幕への思い・地域への思い

関係者に話を聞くと異口同音に「やっとこの日が来た」という。

兵庫ブルーサンダーズの川﨑大介球団社長は「練習ができない期間にも地域の方に助けていただき、手作りの打撃ケージを作っていただいたりした。それで寮生が練習することができた」と述懐した。その間も地域貢献活動の依頼が来るなど、地域とのつながりを改めて感じたという。

堺シュライクスの夏凪一仁球団代表は「不安はあるがグラウンドで選手が駆け回るのを見るとうれしい」と語った。「選手には試合ができなかった分、一瞬のプレーに全力を注いでほしい、目の前のことを全力でやってほしい」と語った。

この試合を観戦した仲木威雄リーグ代表は「プレーをしているところを見てよかった」と安堵した。
「この2カ月はどんなことを考え、どんな準備をしたか、野球やチームにしっかり向き合う時間になったと思う」

リーグが開幕できるよう情報収集を続け、感染症予防対策の大阪モデルを参考にし、開幕日を設定できた。
「このリーグには3つの理念を掲げています。そんな中で野球バカであってほしいし、『美意識』をもって取り組んでもらいたい。そして地域社会への関わりをしっかり持ってほしい」

(仲木威雄リーグ代表)

首脳陣だけではなく、兵庫ブルーサンダーズの運営スタッフも、この日を待ち望んでいた。

アナウンスを担当した中嶌杏里さんは「本当に待ち遠しかった。無観客試合でアナウンスを行ったけれど、インターネットで配信されていたこともあり、お客さまに声を届けられていることが心の支えになった。楽しんでもらえたらうれしい」と話した。

スタッフ、選手がそれぞれ思い思いにこの試合に関わり、開幕の晴れ舞台を作った。

今年日本の独立リーグでは2番目に開幕したさわかみ関西独立リーグ。完全に元の通りの形態になるにはもう少し時間がかかりそうだが、首脳陣、選手、スタッフが一丸となり、元に戻った時にはきっと熱い戦いを見せてくれることだろう。

(取材・文・写真 SAZZY

野球を観る喜び、見られる喜び 堺シュライクス対和歌山ファイティングバーズ

制限付き入場

コロナウィルスの感染拡大から「無観客試合」という言葉がにわかに出てきた。どんなスポーツでも観客を入れずにスタートする…ということに慣れきっていたが、6月14日、堺シュライクスのホーム球場の一つ、南港中央公園野球場で、ついに観客を動員することになった。

 

試合前に夏凪一仁球団代表は「市や球場の方針や対策にのっとって準備をしてきました。お客さまにはご迷惑をおかけするかもしれませんが、楽しんでもらえればと思います。やっていい範囲で柔軟に動いていきたいと思います」と語った。

 

今回堺シュライクスがとった対策は多岐にわたった。

  • インターネットによるチケットの事前販売
  • 入場時に検温
  • 大阪コロナ追跡システムへの登録
  • 手指の消毒
  • マスクの着用
  • 座席間隔をあけての着席
  • 大声を出しての観戦禁止

 

それに加え、スタンドの上部の座席を立ち入り禁止にし、スタッフにはフェイスガードを着用させるなどの対策が取られた。

(立ち入り禁止区間を作るためにロープを張る堺シュライクススタッフ 畑さん)

(検温・消毒ブースを作成した堺シュライクスインターンスタッフ)

 

午前10時40分、予定より少し開門が遅れたが、野球を観ることを今か今かと待ち望んでいたファンの方々が入場した。

(入場するファンの方々)

(コロナ追跡システムに登録するファンの方々)

(検温の様子)

 

一度に入場できる人数を10人とするなど、蜜対策もぬかりない。公式サイトで販売していた120枚のチケットは完売。イニング間にアナウンスやスコアボードに掲示を出し、消毒の実施や密集しないように呼び掛けていた。

 

和歌山ファイティングバーズのリスタート

この試合は球団体制が変わった和歌山ファイティングバーズの2020年初戦となった。田所洋二球団代表はコロナウィルスによる開幕延期期間についてこう語った。

 

「来るべき開幕に向けて粛々と準備をしていく…と言えば簡単なのですが、実際には選手のコンディションが心配でしたし、選手のアルバイト先が休業になりアルバイトがままならない事態にもなりました。」

 

そんな中、地元の農家の方や、スーパーマーケットのオーナーから仕事を紹介してもらうなどの支援を受けた

 

「地域の皆様からの応援で光が見えた時期でもありました。これまでも地域貢献を掲げていましたが、実際に何をしたらいいのかはわからないままでした。地域の皆様からの応援で野球ができると実感できた2か月間でした」

 

その意識は選手の間にも実感として意識づいている。「選手の夢が地域の皆さんの夢と言われるよう、活動していきたいです」

 

川原昭二監督も「野球をできる喜びを感じてほしい。優勝を目指すとともに精神的にレベルアップしてほしい」と語った。

 

また、和歌山ファイティングバーズに「紀州闘鶏会」という応援団も新たに結成された。

「昨年の8月から今年に向けて準備をしてきました。もちろんチームが勝つことに越したことはないですが、周りの方にも楽しんでもらいたいですし、そういうところで少しでもチームを後押しできたらと思います」と団員の方は抱負を語った。

(紀州闘鶏会の横断幕)

 

マスコットデビュー戦

この日、7回裏の攻撃前に、堺シュライクスマスコットキャラクター、ライパチが初お披露目となった。堺っ子体操をファンの前で披露すると、スタンドから拍手が起こった。

 

デビューについてライパチ本人に話を聞いた。

 

「堺シュライクスに新しい仲間として加わることができてうれしいパチ!デビューは2カ月遅れることになったけど、この期間はファンの人の前に立つことを考えてずっと練習していたパチ!」

 

人知れず練習を積み重ねたライパチ。堺っ子体操をするためにグラウンドに出た時に、決意を新たにした。

 

「グラウンドからスタンドを眺めると人数制限があったとは思えないほど、たくさんの人がいたなと思ったパチ。緊張したけど力になったパチ。だからこの状況が落ち着いたら、もっともっとたくさんの人に来てほしいと思ったパチ!新しいシュライクスの楽しみとしてボクも見に来てほしいパチ!」

(お客さんに向けてサムズアップでアピールするライパチ)

 

応援の力・野球の力

「自分の力じゃないものを感じました」堺シュライクスの河村将督は声援についてこう語った。他の選手たちも、気合いが入った、うれしかったと同様に語る。

「本当にありがたかったです」と話したのは、和歌山ファイティングバーズの大前拓也。「和歌山ファイティングバーズには去年まで応援団がなかったですし、こうやって拍手や応援のメガホンの音が聴こえる中でプレーができてよかったです。和歌山でもファンの方が入場可能になる時がとても楽しみです」

(BFL時代から毎年在籍している唯一の選手 大前拓也)

 

また、ファンの方からも同様に

「スタンドに上がって、グラウンドが見えた時に泣きそうになりました。やっと始まったんだなと思いました」という声を多く聞いた。

 

試合後、夏凪球団代表は「お客さまがいる中でプレーしたことによって、選手も刺激になったのではないかと思います。くら寿司スタジアム堺の試合についても球場と話し合いしながらになりますが、見ていただけるのであれば、選手たちには暴れまわってアピールしてほしいです」とまとめた。

 

NPBより一足早く観客を入れた試合は、グラウンドもスタンドも、たくさんの笑顔で溢れていた。早くスタンドによりたくさんの人が訪れる日を願ってやまない。

 

 

(取材・文・写真 SAZZY

さわかみ関西独立リーグ堺シュライクスのキャプテン、丹羽竜次【sideP】

(photo by SAZZY

丹羽竜次(ニワリュウジ)

birthday:1996.10.11

blood type:A

height:169cm

weight:63kg

foot size:27.5cm

favorite color:黄色

favorite animal:ホワイトタイガー

nickname :マメ(小学生のころ)

dobutsu_uranai:ゾウ。勤勉実直な堅物だが純粋な人

 

【1】自己分析

(小学1年生のころ)


ネガティブです。でも野球に対してはポジティブです。野球のことなら「これ失敗したらどうしよう」とか思わないのに、ふだんは色々ネガティブなことばっかり考えてしまいます。

 

あと話すのが苦手で、できれば円陣での声掛けもできればやりたくないくらいに、緊張します。ほんとムズかしいです(苦笑い)

 

キャプテンになってみんなの前で話すことも多いんですけど、そのたびにいっぱい考えてドキドキしてます。りお(鶴巻璃士)さんとか、がじ(佐藤将悟)さんに手伝ってもらって、乗り越えています。

 

(インタビュー中、ファンの方への一言を考えすぎて、頭から煙が出そうな丹羽選手)

 

試合だったら全然緊張もしないし、考える前に体が動いちゃう感じなんですけどね……。

 

言葉で引っ張っていくことはできないですけど、ぼくの行動を見て、みんなが何か感じてくれればいいなと思います。「背中で語る」ですかね(笑)

 

【2】野球道具

 

独立リーグに入ってからは、harryというメーカーを使っています。大阪でフルオーダーで作ってもらっているんです。

 

バットはゼットがすきですね。

 

ちなみに私服は、友だちにもらってます。「その服いいね、ちょうだい」って。最近自分で服を買うことないですね(笑)

 

【3】アルバイト

夏凪代表の経営する、焼肉しょうでアルバイトをしてます。まかないが豪華で、めっちゃおいしいです!最近焼肉ばっかり出てきます(笑)

 

【4】料理

休日は引きこもっています。ずっとYOUTUBE見てますね。だいたい野球系…スーパープレイ集なんかが多いかもしれない。

コロナウイルスの影響で家にいることが多いので、料理をよくするようになりました。基本的にその日の料理に必要な食材だけ買って作るんですが、材料が残ったらそれを使って料理もできます。


毎日かえちゃん(平岡楓選手)、じゅき(今井寿希也選手)、ぼくの3人分を作って、一緒に食べてます。

 

(今井選手提供の写真。今井選手が「好物は丹羽ちゃんの作ったカレー」と答えるほど、丹羽選手は料理上手)

 

【5】チームメイト

 

基本的に引きこもりたい人なので、誰かとどこかに遊びに行くっていうことはないんですが、じゅきは気を使わなくていいので、一緒にいると楽ですね。

 

キャプテンの立場から見て、助かるなと思う選手もじゅきです。ムードメイカーで声が大きい、言うことを聞いてくれる、そして使い勝手がいい。じゅきさん、先輩なんですけど(笑)

 

【6】とっておきの一枚

 

中学3年生のときの写真。

 

小学校までアイスホッケーをやっていました。夏は野球、冬はアイスホッケーって感じです。

 

【取材後記】

インタビューは寮の部屋(4人部屋)からおこないました。部屋を見せてくださいとお願いすると「汚いですよ」と言いながら見せてくれた部屋は、予想以上にとても綺麗。きちんと整理整頓されています。今の環境に感謝して日々を過ごしているシュライクスの選手たちの意識の高さが、部屋の綺麗さにも表れているようでした。

 

インタビュー中、一つひとつの質問に、じっくり時間をかけて言葉を選んで話す丹羽選手。自分のことを「緊張しい」だと言い終始照れつつ質問に答える姿と、試合中の姿とのギャップにビックリします。

 

もしかして丹羽選手には野球用のスイッチが搭載されていて、野球をするときにはそのスイッチをオンにしているのかもしれません……。

 

(スイッチオフ時の丹羽選手)

 

(photo by SAZZY)

(スイッチオン時の丹羽選手)

 

(文:さかたえみ 写真:SAZZY、選手提供)

さわかみ関西独立リーグ 堺シュライクス 丹羽竜次 【side B】

新型コロナウイルスの影響で開幕延期―

前代未聞の事態に、今選手たちは何を思っているのか。

オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。

第6回は堺シュライクスの新キャプテン 丹羽内野手をピックアップ!

 

 

華麗

カッコいい―丹羽竜次のプレーを形容するなら、その一言に尽きる。バッティングも、走塁も、守備も、全てが様になる。

 

昨年はオープン戦でチーム史上初となるホームランを放ち、セカンドのレギュラーとして定着。一時打撃も好調だったこともあり、2度リーグ選抜にも選ばれた。

 

「1年目に山川(和大 現巨人)さんを見て、打てないなって思ったんですけど、ソフトバンク3軍戦の時は相手が左でもボールがしっかり見えました」

 

颯爽と髪をかき上げ守備に就く姿は見ていて惚れ惚れする。そんな丹羽がキャプテンに就任することになった。

キャプテン就任

「自分が一番びっくりしています」

 

ある朝、選手に投票用紙が配られ、その場でキャプテンにふさわしい者の名前を記入するように首脳陣に言われた。丹羽は考える間もなく、誰かの名前を書いた。結果はまさかだった。丹羽は首脳陣会議を経て、キャプテンとなった。

 

「ガジ(佐藤将悟)さんか、(鶴巻)璃士さんが10月からずっとチームを引っ張っていたので、そのままキャプテンになるのかなと思っていました。僕はずっと(仕切る側ではなく)練習をしていたので」

 

小学校中学校以来のキャプテン。それも「父がやっていたチームだったので」ということだった。野球人生の中で初めて「人に求められてキャプテンになった」瞬間だった。

 

(photo by SAZZY

(2020年3月3日、練習の指示を出す丹羽。右手にはマメの跡が残る)

 

大西監督と丹羽竜次

その首脳陣会議のことについて、大西宏明監督は3月のインタビューの際、このようなことを話していた。
「丹羽は去年の今頃は練習の態度とかもイマイチで『どうしたものか』と思っていた選手の一人だった」

それでも「丹羽で行こう」とOKを出した。丹羽自身にどんな心境の変化があったのか。

「2018年に兵庫に移籍して、そこであまり試合にも出られなくて、腐ってた部分はありました。それが堺に来て監督やコーチが熱く指導されているのを見て、『こんなに一生懸命やってくれるんだ』って思いました。それに応えるためにももっと頑張らないといけないなと思ってからですね」

昨シーズン不振に陥った丹羽に大西監督がアドバイスを出した。「バットコントロールをよくするために、バットのグリップを手のひらではなく指を意識して握ってみろ」というものだった。それに応えた丹羽は6月に月間打率.643という高打率をたたき出した。

円陣の声出しや、スピーチは苦手。キャプテンだから何か特別なことをするのではなく、自分がやらないといけないことをやっていくことで引っ張っていく。そして自分が大変になったら頼りになる先輩に助けを求める。これが丹羽式のキャプテン像だ。

「去年布施(航)さんがキャプテンやってたのを見て大変そうだなと思っていたのですが、周りに助けてもらいながら、やろうと思っています」

 

(photo by SAZZY

(2020年2月4日、練習中に転んではにかむ丹羽)

 

今季の目標と決意

今年、堺には大神康輔、今井寿希也、樋口勇次と立て続けに内野手が入団。投手の中尾雄斗も内野を守る予定がある。そのため、オープン戦では慣れ親しんだセカンドではなく外野も守っている。

「守ったらすんなりできました。ベンチまで遠いですけど(笑)でもセカンドを守りたいです」

1年通してセカンドを守ったことで、ポジショニングや打者の打球を読めるようになった。エラーが多かったという反省もあるが、それ以上にセカンドを守る楽しさを感じている。

「ショートとサードの動きがファースト方向なのに対して、セカンドは逆の動きもあるので、目立たないけど難しいポジションだなと思っています。それが楽しいんです」

 

(photo by SAZZY

(2020年2月14日 セカンドのシートノックに入る丹羽)

今年挙げた目標は「全タイトルを獲る」と「打率4割」。
「神原(裕司)さんに『俺の記録※抜いたら焼肉おごってやるから』って言われました。今焼肉屋(焼肉しょう)でバイトしているんで別の物に変えてもらおうとは思ってますけど(笑)それぐらいの気持ちでやった方がいいって言われたので打率4割と最多安打はこだわってやっていきたいです」

内面は大きく変わった。今季キャプテンとして監督、コーチ、選手、そしてファンの期待に応えていくことになる。内面も実力もレベルアップした丹羽に注目だ。

※神原裕司の記録・・・2019年堺に所属。打率.348、49安打、5本塁打、44打点で首位打者と打点王を記録。44打点はリーグ記録。

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丹羽内野手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!

● 出口航平(06)・・・パワーが異次元

丹羽竜次プロフィール
1996年10月11日生まれ 右投げ左打ち
駒大苫小牧高-東京国際大-姫路GoToWORLD-ウィンサーロイヤルズ-兵庫ブルーサンダーズ-堺シュライクス
2019年成績 40試合 打率.237(135-32) 0本塁打 14打点 盗塁12

(文・写真 SAZZY

 

 

さわかみ関西独立リーグ堺シュライクスのナックルボーラー、佐野太河【sideP】

佐野 太河(サノ タイガ)

birthday:1998.11.16
blood type:B
height:172cm
weight:67kg
foot size:27cm
favorite color:赤
favorite animal:ドールシープ
nickname :シャワー室の長
dobutsu_uranai:コアラ。宴会好きな夢追い人

【1】自己分析

マイペースです。他人のことはあまり興味がないというか、気にしないですね。同世代で対戦してみたい選手がいない(sideB参照)のも、自分のことだけを考えているからかもしれません。

たとえば、自分の調子が悪いとき、他人と比べて焦ったり落ち込んだりするということもないですね。

他人を気にするよりも、自分を高めていくことが、楽しいと思います。

監督やコーチからいただいたアドバイスとか、ツイッターで集めた情報とか、いいと思ったことはとりあえずやってみます。やってみてから自分に合うかどうか考えますね。もしダメならやる前に戻せばいいんだし。

【2】スポーツメーカー

グローブは「ウィルソン」を使っています。ウイルソンのすきなところは、デザインがいいところ。あと使いやすさです。

【3】休日の過ごし方

(趣味は初動負荷トレーニング?と聞かれて笑う佐野投手)

休日は初動負荷トレーニング(ワールドウイング)をしています。千葉にいたころに初動負荷トレーニングを知り、家の近くのジムに毎日のように通っていました。

大阪にも初動負荷トレーニングができるジムがあって、コロナウイルスが流行する前はずっと通っていましたね。

【4】チームメイトや友だち

(成人式のときの写真)

誰かと一緒に遊びに行くとかは、あまりしません。かといっていつもひとりでいるわけでもなく、すきなことをして過ごしていたら、気がつけば誰かがいて一緒にやっていた、という感じです。

一緒にいる時間が一番長いのは……山田(偉琉 捕手)ですかね。トレーニングもひとりですることが多いんですが、気がつけば山田がいることが多いです。

関東にいたときの友だちとは、たまに連絡をとっています。就職活動をしている友だちが多いので、就活のあれこれを聞いたり、自分の近況報告をしたり。

【5】映画鑑賞

映画鑑賞がすきです。最近忙しくて見ていませんが、オススメは2つ。

スターウォーズとアベンジャーズが一番すきです。スターウォーズは全部すきですけど、特にすきなのは「エピソード3」

前までは時間があれば映画を見ていたんですが、今の自分には野球をしていくために足りないものが多すぎて、それを補うために時間を使っています。

たとえば、ぼくには柔軟性が全然足りなくて股関節が硬いので、ストレッチの時間をかなり増やしたりとか。

【6】Twitter

YOUTUBEにあがっているナックルボーラー動画はほとんど見ています。あと、自分のTwitterに自分の動画を投稿しています。

最初は単純に「自分でもすごい球を投げられているところを、みんなにも見てもらいたいなぁ」と思って始めましたが(笑)、今は自分の成長の記録として、日記感覚で使っています。

野球以外はけっこう適当ですね。目標を達成するために計画的にやっていくタイプではないです。夏休みの宿題も全然コツコツやらなかった(笑)

【取材後記】

YOUTUBEでナックルボーラーの動画を見て研究したり、ワールドウイングを趣味だと言ったりしてしまうぐらい、オフの時間も野球のことを考える時間が長い佐野投手。

インタビューをしながら浮かんだ言葉は「寝ても覚めても野球」です。そのため、side Pのインタビューもside Bの延長のように感じました。

「フルタイムナックルボーラー」という目標のために、今やるべきことが何かを考え、険しい道のりを一つひとつクリアしながら進んでいく姿は、RPGを楽しむかのようです。

(一方で、球団職員の伊藤さんによると「しゃべったら真面目やけど、実は結構おちゃらけてるかな」とのこと。チームメイトの藤澤琢朗選手、片山凌平選手のツイッターでは、おちゃらけた佐野投手の姿も見ることができます。)

今年の佐野太河投手のレベルアップが楽しみです!

(文:さかたえみ 写真:佐野投手提供)

さわかみ関西独立リーグ堺シュライクスのナックルボーラー、佐野太河【side B】

新型コロナウイルスの影響で開幕延期―
前代未聞の事態に、今選手たちは何を思っているのか。
オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。

第5回は堺シュライクスのフルタイムナックルボーラー 佐野太河投手をピックアップ

西船橋のドトールで

「君の夢を叶えるための応援したい」

2019年11月。メジャーリーガーを目指しワールドトライアウトの受験を終えた佐野太河は、堺シュライクスオーナー、松本祥太郎からそう声をかけられた。場所は千葉県、西船橋にあるドトールだった。

「北海道のリーグからも声をかけられたのですが、松本オーナーからそういう言葉をかけていただいたので、堺に決めました」

すごいナックルを投げると騒がれた大学3年生の右腕は、こうして大阪にやってきた。
特に対戦したいと思う同世代の選手はいない、趣味はトレーニングというストイックな姿勢で野球に取り組んでいる。

(ナックルの握りを披露する佐野。爪を軽くボールに当てて投げるのがコツ)

ナックル

「大学2年生までは普通の投手でした」という。ほかの変化球も投げていたが、意外なところにきっかけがあった。
「NHKの球辞苑という番組で、ティム・ウェイクフィールドがナックルの投げるコツを紹介していていたんですが、それでコツをつかんだ感じでした」

これまで遊びで投げていたナックルが急激な変化を見せ始めた。そこから日本でもまだほとんど例がないフルタイムナックルボーラーへの道を進み始めた。※

日本で手本にできる選手は少ないが、ウェイクフィールドやR・Aディッキー、スティーブン・ライトらの動画を見て手本にしている。
「もっと精度の高い無回転のボールを投げたいですね。ストライクゾーンにしっかり入れることができれば抑えられると思っています」

課題と藤江コーチからのアドバイス

練習中は毎回ブルペン後方にカメラを置き、投球動作を録画している。撮った動画の一部はTwitterで公開もされている。

(2020年3月3日 カメラの前で投げる佐野太河)

「毎回テーマをもって練習しています。例えば体の開きだったり、フォームと感覚の確認のためですね。Twitterに動画をアップしているのは、当初は見てほしいっていう思いがあったんですが、成長の記録として残すためでもありますね。フォームをしっかり意識すれば精度も上がってくると思います」

周りの選手ともコミュニケーションを取りながら練習をしている。キャッチャーからはどのようなボールの変化をしているのか、どの高さに入ったのかなどを確認してもらっている。

藤江均コーチからも投球フォームや下半身強化なども指導を受けている。

(2020年2月14日 佐野の投球を見つめる藤江コーチ)

ある日の一幕。藤江コーチがもう少し腕を上げて投げてみるのはどうかと佐野に提案していた。「俺もやったことないからわからへんけどいろいろ調べたり(ほかのナックルボーラーの)動画見た感じやねんけどな」と言いながらも下半身の使い方などをアドバイスしていた。試行錯誤はいろいろ続いている。

「今はいろいろやってみて試しています。だめなら戻せばいいですし、自分にとって何がいいかを見極めたいです」

今季の目標と決意

話はワールドトライアウトに戻る。その時は対戦した打者すべてがすごいと思ったという。
「白根尚貴さん(四国IL愛媛コーチ)や速水隆成さん(BCリーグ群馬)にはいいと思ったナックルも打たれました。スイングスピードもすごかったです」

登板したオープン戦も初登板は四球から大量失点を喫した。だが、そのあとの登板は無失点に抑えた。
「大学とかと比べるとやはりレベルが高い世界だなと思いました。でも、ストライクを入れることができれば、勝負できると思います」

現在は制球力の向上、そして、緩急をつけるための「2種類目のナックル」を実戦で使えるように磨いている。
「まだ打者とそれほど多く対戦していないので、先発して多くの打者と対戦したい。目標は最多勝です」

その目標の先にはNPBやMLBを見据えている。ボールは揺れても志は揺れずに前人未到の境地を佐野は進んでいく。

※日本のフルタイムナックルボーラーの例
NPBでは98年から2年間大阪近鉄バファローズに所属したロブ・マットソン、07年に広島東洋カープに所属したジャレット・フェルナンデスがいる。

佐野投手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!

●堺シュライクス2年目の投手…練習の最後のキツい走り込みをしっかりこなしている

佐野太河投手プロフィール
1998年11月16日生まれ 右投げ右打ち
浜松南高―千葉大学―堺シュライクス

(文・写真 SAZZY)

さわかみ関西独立リーグ和歌山ファイティングバーズの西河洋樹と杉本大樹【sideP】後編

前回に続き、和歌山ファイティングバーズのキャプテン、西河洋樹捕手(右)と杉本大樹投手(左)のインタビューをお届けします。この日のやりとりで、杉本投手のニックネームが「ウサギ」に仮決定しました。杉本投手が「ウサギ」と言われるその理由とは……?

 

【5】オフの過ごし方

 

杉本「理想のオフは、のんびりすること。でも実際のオフはアルバイトをしています」

西河「僕もアルバイトですね」

 

西河「だから私服らしい私服もないですね。いつもジャージかスウェットにパーカーって感じです。どこか出かけるとなったら、ジーパンにパーカーを着ます」

 

杉本「どっか出かけることなんてあるん?」

西河「あるって!」

 

西河「今日着てる服みたいな感じの服を着ています」

杉本「いやいや、今日はインタビューを気にしてキレイなの着てる方ですよ。いつもはもうちょっとヨレてますよ」

 

西河「いやいやいやいや、だいたいこんなんです。僕、私服に無頓着なんですよね。大学の時に一回、私服を勉強しようと思ったんですよ、大学デビューしようとして。無理だとわかったんで、あきらめました」

 

杉本「なんなん、私服勉強するって……笑」

 

杉本「たとえばバーとか、ちょっとオシャレなところに飲みに行くとき、ふつう服に気をつかうじゃないですか?僕が準備して部屋を出て、西河さんをふと見たら、こんな服で立ってるんですよ。西河さんはそのままのかっこうで行きますからね」

西河「僕は誰に見られてるとか、あんまり気にしないもんで……」

 

杉本「とはいえ、あんまり飲みにも行かないですけどね」

西河「兵庫や大阪みたいに、飲めるところたくさんないもんね」

杉本・西河「野球に打ち込める環境ではあるよね」

 

西河「最近は、コロナウイルスの影響でみんなで出かけることもできないので、近場で釣りをする選手が多いですね」

 

※実際に和歌山の選手にアンケートを取ったところ、多くの人が趣味を釣りと答えました。

 

 

【6】チームメイト

 

 

西河「基本的に、チームはみんな仲がいいです。杉本と一緒にいることが多いですけど、ほかの選手とも楽しくやってます。僕はキャッチャーなんで、とくにピッチャー陣とよく関わりますね」

 

杉本「チーム内で一番長く一緒にいるのは西河さんです。試合でも練習でも、ほぼ西河さんにボールを受けてもらっています。寮やブルペンでは、どういう風なリードをしてほしいか、といった話をしたりしています。でも西河さんにホメられることは基本的にないですね。『調子に乗るから』って言われます」

西河「ホメませんね!(断言)」

 

(調子に乗っているときの杉本投手)

 

西河「杉本とはいっつもこんな感じです。ケンカ寸前までいくこともあるぐらい、こんなやりとりをしています。こういう関係性は、杉本とだけですね。ふたりで絡んでいるときは、他の選手たちはやりとりに入ってこないです。まぁ相手をしてあげないと、杉本はさみしくて死んじゃいそうなので……」

 

杉本「僕から西河さんに絡みに行ってるみたいな言い方ですけど、西河さんもけっこうこっちに来ますからね」

 

西河「かまってあげないと、杉本が離れたところからジッと見てくるんですよ。それであとからふてくされるんです。嫉妬の多いウサギやなぁ。もう、ニックネーム『ウサギ』でええんちゃう?」

 

杉本「勝手に言っとけばいいやん、もう!」

 

【とっておきの1枚(高校時代)】

藤井学園 寒川高校時代の杉本投手。

 

 

小学生のころの西河捕手。野球チームでの写真。

 

 

【取材後記】

笑いが絶えず、関係性のよさが見えたインタビュー。そして、チームの雰囲気のよさも感じたインタビューでした。

 

「このインタビューが終わったらすぐ、大ゲンカですよ。後ろの『頂』がバリバリに割れているぐらいもめますね」と言う西河捕手に対し「大丈夫です、僕の方が強いんで!」と返す杉本投手のやりとりで、この日のインタビューは終了しました。

 

仲が良いのか悪いのかわからないふたりの様子を、河原監督は「ハッピーセット」と呼んで頬を緩めているのだとか(田所球団代表談)。

 

球場でふたりに会ったら、どちらがケンカに勝ったのか聞いてみてくださいね。

 

(そんなことを言いながらも、190センチという長身の杉本投手のために、カメラの位置を調整してあげる西河捕手)

 

さかたえみ

写真 さかたえみ、選手提供

さわかみ関西独立リーグ和歌山ファイティングバーズ 杉本大樹【side B】

新型コロナウイルスの影響で開幕延期―
前代未聞の事態に、今選手たちは何を思っているのか。
オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。
第2回は和歌山ファイティングバーズの杉本投手をピックアップ!

 

苦すぎた初登板

2019年6月22日。堺シュライクス対和歌山ファイティングバーズの一戦。チームが同点に追いついた6回裏に出番は突然やってきた。住之江公園野球場で「杉本」の名前がアナウンスされた。まだチームのホームページにも名前が掲載されていない投手の登板。球場は騒然となった。

190センチの高身長が住之江公園野球場の独特な色味の照明に照らし出される。ユニフォームは間に合わず、入団予定だった外国人選手のもの。スタンドには香川から父親が観戦に訪れていた。

しかし辻田寛人に四球、鶴巻璃士の犠打の後、辰巳大晴にタイムリーを浴びた。そして中道勝士を敬遠。打席にはJ・J(ジュリアン・ジョンソン)を迎えた。

無心に投げ込んだストレートは、打った瞬間それとわかるホームランとなり、レフトの場外へ消えていった。

「こんな入団してすぐ投げられるとも思ってなかったんですが、やはり高校と大学の時ともレベルは違いました。外国人選手とも対戦したことはなかったですし、ストレートも自信があったんですが、あんな簡単に飛ばされてしまいました。まだまだ自分の力不足だなと思ったのと、球場の雰囲気も、早い段階で経験できたことはよかったのかなと思います」

杉本大樹の初登板は苦く、そして教訓として今も心の中で生き続けている経験となった。

 

(2019年6月22日、初登板のマウンドに立つ杉本)

 

 

まだ伸びる

「大学4年の春に神宮大会のメンバーにも入れなかったので、どうしようかと思っていました」

プロを多数輩出してきた日本文理大。その当時は投手専門の指導者もいなかった。6月、球団関係者の前でセレクションを受けた。結果は合格。晴れて和歌山ファイティングバーズの一員としてユニフォームに袖を通した。日本ハムファイターズでリリーフやクローザーとして活躍した川原昭二監督が率いるチームだ。

「川原さんに教えてもらいながら、今まで自分でも気づかなかった課題や考え方を知ることができました」

下半身の使い方、内転筋の使い方、力の入れどころ、上半身と下半身の連動方法を一から教わった。意識をして練習に取り組んだら遠投の距離が伸び始めた。そこから球速が伸びてきた。今年に入ってから取り組んだ課題が目に見えて実感として見えてきた。

「今年から入団してではなく、去年から取り組み始めてできてよかったと思います。川原監督からは『もっとうまく(下半身を)使えるようになったら、球速があと5キロは軽く伸びるぞ!』と言われています」

フォームも変わり、自信のあったストレートはシーズン中、少し球速が落ちてきていたそうだが、今年に入り、コンスタントに強いボールが投げられるようになってきた。昨年からの積み重ねがようやく花開こうとしている。

 

 

監督直伝のトレーニング法

現在和歌山ファイティングバーズの練習は、少人数で集まって行うこともあるが、個人での練習が占める割合が高い。それでも練習量を落とさないように工夫をしている。

「ランニングと腹筋。寮にバーベルとシャフトとがあるのでジムに行けないぶんウエイトトレをしています。あとシャドウピッチングは1日絶対50回やろうと決めています」

それだけでも普通にしんどそうだが、それに加えて、あるトレーニング方法を取り入れている。

「なわとび1000回ですね。200回を5セットみたいな感じでやっています。監督が現役時代に夜中にやっていたと聞いたので、マネをしてみようと思い始めました」

なわとび1000回。なんだか簡単そうにも見えてしまうが、試しにやってみたところ、跳び続けるだけでもなかなかにつらい。それを毎日続けてこそ、川原監督のような成績も残せるものなのだろう。

※1983年、ファイターズに所属していた川原監督はリーグトップの59試合に登板。うち先発が2試合ながらもチームトップの145回2/3イニングを投げ、同じくチームトップの11勝を記録。翌年には14セーブを挙げるなど、89年の引退までファイターズのブルペンを支え続けた。

 

 

今季の目標と決意

 

「まだ先発するか抑えをするかというのは言われてないんですけど、どこでも投げても抑えられるようにしたいです。先発なら最優秀防御率と最多勝、奪三振のタイトルは取りたいと思ってやっています」

そのためにはまだスピードやキレ、コントロールを2段階は上げないといけない。見据えるのはNPBからのドラフト指名だ。

「いつ開幕してもいいように今を大事にしないといけないと思います。去年より今年のほうが田辺の人に応援されたり、声をかけられることも増えてきました。田辺の人たちは温かいので、元気を与えられるように頑張りたい。そのために優勝して・・・田辺で優勝決定戦とかやったら盛り上がると思いますし、応援してもらえるようにやっていきたいです」

取材中、杉本の後ろに「頂」と書かれた書物があった。これは小学生のころ自分で書いたものを今も部屋に飾っているものだ。チームとしても、個人としても頂を目指し、開幕に、シーズンに備えていく。

 

(リモート取材中の一幕)

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杉本投手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!

松本昌大(和歌山)・・・どこに投げてもストライクゾーンに入れば芯に当てて打たれた。今年は味方なので頼もしい
草間サトル(06)・・・打者に向かっていく気持ち・姿勢・闘争心がすごい

杉本大樹投手プロフィール

1997年4月24日生まれ 右投げ右打ち

寒川高―日本文理大―和歌山ファイティングバーズ

2019年成績 4試合 0勝1敗0S 防御率36.00

(文・写真 SAZZY)

さわかみ関西独立リーグ和歌山ファイティングバーズの西河洋樹と杉本大樹【sideP】前編

今回インタビューに答えてくれたのは、和歌山ファイティングバーズのキャプテン、西河洋樹捕手(右)と杉本大樹投手(左)。

同じ寮に住んでいるという理由から、ふたり一緒にインタビューをおこないました。プライベートでも仲が良いというふたりの、さながらケンカ漫才のようなやりとりを、今週と来週2回に分けてお届けします。

 

西河洋樹(ニシカワヒロキ)

birthday:1993.11.15

blood type:AB

height:175cm

weight:77kg

foot size:28cm

favorite color:青

favorite animal:ねこ

nickname :ひろき

dobutsu_uranai:ゾウ。勤勉実直な、堅物だが純粋な人

 

杉本大樹(スギモト ダイキ)

birthday:1997.04.24

blood type:O

height:190cm

weight:94kg

foot size:29cm

favorite color:赤

favorite animal:犬とライオン

nickname :(ウサギ?)

dobutsu_uranai:コアラ。宴会好きな夢追い人

 

 

【1】お互いの印象と自己分析

(幼稚園の頃の西河選手)

杉本「西河さんは優しい人です。ただ、野球や自分自身に対しては厳しいと思います。僕たちが相談をすると答えてくれるし、練習にも付き合ってくれるんですが、それって自分の練習時間が削られるということですよね。でも限られた練習時間で、自分自身のできることを考えて実践しているという気がする。尊敬しています」

西河「杉本はすんごい『かまってちゃん』です。たいてい僕の後ろか横にいます。さみしがりやで、一人だとさみしいんです」

杉本「え!!そんなこと言うなら、僕もさっきの発言取り消します。かまってあげないと西河さんがちょっとさみしそうな顔をするから、僕が西河さんをかまってあげてるんです!」

(それからしばらく「よく言うわ」「そっちこそ」と、小学生男子のように言い合うふたり)

 

(幼いころの杉本大樹投手)

西河「自己分析ですか……自分では自分のことをドジだと思いますね。しっかりしていると言われますけど、抜けてます、いろいろと」

杉本「僕はひとりでいるのが苦手です。休みの日にひとりでいるのなんて無理です。ひとりでいるのは、寝たいときぐらいですね」

(やっぱりさみしがりやなんやん…)

 

【2】スポーツメーカー

西河「メーカーにこだわりはないですけど、グローブの形にはこだわっています。野球道具を見るのがすきで、いいなと思ったものを買ったり、オーダーしたりしていますね。

自分でグローブのひもを変えたり、メンテナンスをしたりするのもすきです。自分の形にしておきたいんです。キャッチャーミットとかも、だいたいいつも同じような形にして使います」

 

(杉本投手のグローブ)

杉本「高校大学はゼット、和歌山に来てからはミズノさんを使っています。僕は『このメーカーがいい』と思ったら全部揃えちゃうタイプ」

 

【3】アルバイト

杉本「休日は、農家さんでアルバイトをしています」

西河「僕も農家さんで働いています」

杉本「西河さんが働いている農家さんと、僕がお世話になっている農家さんが友だちなんです。だから僕が仕事に行ったら『西河は何しとるんや~?』と聞かれたりします」

(めっちゃ仲良しやん……)

 

 

【4】アニメや映画

杉本「この前観たのは……バイオハザード。バイオハザード観たよな?」

西河「バイオハザードはおすすめじゃないやろ……」

杉本「僕の部屋で何人かで観たんですよ、バイオハザード。僕、ホラー系があんまりすきじゃないんですけど、西河さんが無理やり見せてきたんですよ。でも映画の途中でわざわざ部屋を暗くしてきたり、いきなり脅かしてきたりするんで、西河さんと一緒に映画観るのはすきじゃないですね」

 

西河「もしホラー映画がすきなら『IT/イット』がオススメですね。ほかにもいろいろ観ますけど、アニメが多いです。『ダイヤのA(エース)』、『ハイキュー!!』、『黒子のバスケ』とか。ハイキューは見返したりもします。『五等分の花嫁』と『ソードアートオンライン』はすごく面白いですよ」

杉本「ワイルドスピードがすきです。あとはクリード。アクション系がすきですね。バイオハザードとかのホラー系は、誰かと一緒に見るなら大丈夫(笑)」

ふたりのインタビューは、後編へ続く……。

さかたえみ

文・写真 さかたえみ、選手提供

さわかみ関西独立リーグ和歌山のキャプテン 西河洋樹【side B】

新型コロナウイルスの影響で開幕延期―
前代未聞の事態に、今選手たちは何を思っているのか。
オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。
第2回は和歌山ファイティングバーズの新キャプテン、西河捕手をピックアップ!

まだ野球ができる

 

「結果が出なければ野球を辞めないといけないかと思っていたんですが、『まだ野球ができるんだ』と思えた1年でした」

名門クラブチームNOMOベースボールクラブを退団し、トライアウトを受け和歌山ファイティングバーズに入団した西河洋樹。チームの中軸としてチームトップのホームラン4本を放ち、リーグ選抜ではオリックス戦でホームラン、通算でもNPBの投手相手に打率.375もマーク。打者として、キャッチャーとしても十分すぎる成績を残したが、それでも西河がシーズンの終わりにそんな思いを持ったのには理由がある。

「だって開幕戦でホームランを打つまで、これまでの野球人生でホームランというホームランを打ったことがなかったんですから」

 

運命を変えたひと言

高校時代はショートを守っていた。大学時代とクラブチームの時に短期間キャッチャーを守った。2018年11月、トライアウトを受けるにあたり、よりチャンスを掴むためにキャッチャーで勝負することにした。

 

(撮影:@fbbsbush

 

「独立リーグには前々から興味がありました。もちろんNPBに行くために近道になるかなという思いはありましたが、活気があっていいなと思いました」

トライアウトに合格し、和歌山ファイティングバーズへ。そこで開幕までの間に、西河は自分のバッティングを大きく変えることを決意した。

 

「誰に教わったとかではないですけど、メジャーリーグの動画とかを見てバッティングフォームを変えてみました。そうするとだんだん良くなってきて。開幕戦前に川原監督に『力が入りすぎているから抜け』と言われて、打席に入る前にフーッと深呼吸するようにしたら、ボールが本当によく見えるようになって打てるようになりました」

 

昨年の開幕戦、3点を先制された3回表。花園セントラルスタジアムのファンはまだ永田雅樹(06ブルズ)のホームランに沸いていた。その興奮冷めやらぬ中、西河はプロ初打席に立った。草間サトル(06ブルズ)のボールを引っ張りこんだ。これが「初めて打ったホームランらしいホームラン」だった。

 

その後もホームランを打ち、前半戦はホームランランキングを争った。怪我人の出る中、「かつての本職」である内野を守ったり、守ったことのなかった外野手も経験した。リーグ選抜も毎回のように選出された。

「守備は全然問題なく入れました。バッティングは後半ガタガタってきちゃったんですけど、本当にここまでできるなんて思っていなかったです。だから今年はできるところまでやってやろう思ってます。やるからにはホームラン王になってみたいなと思います。目指せるなら、目指すところまで行きたいと思います」

 

(2019年7月25日 リーグ選抜戦で打席に立つ西河)

 

埋められない差はない

2019年5月15日、オリックス・バファローズのファームチームとの対戦。西河は9回に漆原大晟からホームランを放った。そのことを振り返ってこう語る。

 

「投手のスピードやキレは今まで見たものとは全く違うものでした。打った感触も今まで感じたことのない感触でした。ただ、しっかり振って当ててホームランにできているので、到達できないレベルではないのかなと思います」

 

クラブチーム時代には別の独立リーグや社会人のチームとも対戦している。

「技術はともかく、少なくとも力の差はほとんどないと思っています。自分がどこを目指してやっているか、どこに気持ちを置いているか、メンタルの差ですね。相手がプロでも超えられないことはないと思っています。同じ人間なんですから」

 

(2019年6月5日 ロッテ浦和球場にてブルペンから戦況を見つめる)

 

今季の目標と決意

今季からチームのキャプテンにも就任することになった。

「今季から運営会社も変わりましたし、これからもずっと続いていくチームだと思っています。だから今年は応援してくれる人や、地元、地域に愛されるように、活気のあるチームにしていきたいです。そのためにはもちろん勝たないといけない。勝つために個人としてはホームラン王を取りたい。チームとしては優勝が目標です」

 

オープン戦、ファイティングバーズは非常に好調だった。「野球をやるしかない」環境であることもあるが、「地域のために野球をやる」という意識が浸透していることも好調の要因だろう。西河本人が体現したように「超えられない壁はない」のだ。優勝を狙うチームの中心として今も限られた時間の中でトレーニングを続けている。

 

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西河捕手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!

 

  • 小山一樹(兵庫)・・・同じキャッチャーとして打撃も肩もすごい。見てても打ちそうな雰囲気がある。
  • 吉田亘輝(堺)・・・コントロールとスライダーがいい。去年何度も対戦してライバル心を持っている。どこまで成長するか期待したい。
  • 蜂谷崇紘(和歌山)・・・とにかく肩がすごい。肩だけならリーグ1だと思う。肩きっかけで興味を持ってあげてほしい。

 

西河洋樹捕手プロフィール

1993年11月15日生まれ 右投げ右打ち

三田松聖高―兵庫大学―NOMOベースボールクラブ―和歌山ファイティングバーズ

2019年成績 43試合 打率.285(158-45) 4本塁打  18打点 盗塁14

 

(文・写真 SAZZY