2020年8月8日 堺シュライクス、バトスタデーレポート「殻を破れ」

2回目のバトスタデー

バトルスタディーズ(https://morning.kodansha.co.jp/c/battlestudies)というマンガがある。週刊モーニングで連載中。甲子園を目指す「DL学園」の面々が日々奮闘する話だ。

 

話のモデルとなっているのは、PL学園高校。作者のなきぼくろさんは、PL学園で甲子園に出場していた球児でもあった。堺シュライクスの球団創設時から、チケットにバトルスタディーズの絵が使われるなど、コラボレーションしている。

 

そんな堺シュライクスとバトルスタディーズが年に一度タッグを組むのが「バトスタデー」だ。

 

昨年は堺シュライクスがDL学園のユニフォームを身にまとい、試合をした。今年は「アート」をテーマにしてアートフェスティバルが開催された。

 

 

野球×アート

「年に一度の大人の遊びみたいな感じですよね」

堺シュライクス・松本祥太郎オーナーはこのバトスタデーについてこう語る。

 

「アートも独立リーグも何かを表現をしながらやっていくものだし、今年はアートで行こうと。そうして『一緒に遊びませんか』と呼びかけて、アーティストの人たちも集まってくれました」

(バトスタデー限定ユニフォームを着用する松本オーナー)

 

また、なきぼくろさんは今回のバトスタデーについてこう語った。

 

「表現というところでは、やっぱり野球もアートも似ているところがあると思っていました。今回のユニフォームをフルーツにしようと思ったのも、バナナにはバナナの、ぶどうにはぶどうの役割があって、それは野球でいうと一番打者は塁に出て、二番で送って、というようなものだと思っています」

 

今回、選手が着用し、クラウドファンディングのリターンにもなっていたユニフォームには様々な果物が描かれている。野球のユニフォームというにはとても明るい。

 

「インパクトを残したいというのもあったけれども、コロナで世間的にもどよーんとしているなかで、少しでもカラフルにしたいなと思っていました」

(バトルスタディーズ作者のなきぼくろさん)

 

球場通路ではアートの体験ブースが設置され、ファンが思い思いに絵をかいたり、作品を作り上げたりしていった。

アートの事業を手掛けるWASABIの平山美聡さんは、イベント後こう振り返った。

 

「これまでは松本がオーナーの球団ということで、自分が直接交わることは今までなかったんですが、バトスタデーを通じて子供たちがアートに参加して、楽しんでくれたのならよかったと思います。野球とアートの要素は今まであんまり結びつかなかったですが、野球やシュライクスとの相乗効果もあるのかなぁと思いました」

(ブースで子供たちにアートの手ほどきをする平山さん)

 

そして16時過ぎ、球場前に1台の車が用意された。球団が荷物を運んだりする球団車(実際に試合や移動に使われている)に絵を描こうというイベントだ。

思い思いの絵を描き始める子供や大人。それぞれ笑顔。試合開始までのひと時が、明るく描かれていった。

(「背徳感がすげぇ」と言いながら、筆を執る松本オーナー)

 

殻を破れ

試合は堺が9-3で06BULLSに勝利。

 

「まず2年目の独立リーグの球団に、ここまでイベントをやってくださった講談社の皆様に感謝。そしてこの試合に勝てて本当によかった。ファンの人にも喜んでもらえてよかった」と大西宏明監督が振り返った。

 

「前年の3倍のお客さまが来場されたということで本当にうれしいです。ここまでできたのもスタッフの頑張りのおかげです」と、松本オーナーがスタッフや学生インターンの労をねぎらった。

 

「去年は本当に宣伝しかしてもらってなくて、逆にこちらがあまり関われてなかったからしっかり関われて、最高でした」となきぼくろさん。イベントの企画や始球式などにも参加。達成感があったという。

 

そして試合後のファンを待っていたのは、ペイントが完成した球団車だった。

(この車を運転した真路選手は「これなら煽り運転されなさそう」とコメント)

 

みんなの絵が合わさったシュライクス号。遠くから見ても一目でわかる非常にカラフルな仕上がりとなった。見るといたるところに穴の開いたピーナッツの絵が描かれている。

 

なきぼくろさんに理由を聞いたところ、「ぜひ太字で書いてください」と言われたので太字で紹介したい。

 

シュライクスの活動は、独立リーグの型にはまったところから、そこから飛び出していこう、殻を破ろうとするイメージがあったので、『殻を破っていこう』というテーマでピーナッツを描きました

 

バトルスタディーズとのコラボレーションもそうだが、クラウドファンディングを用いたイベント、応援グッズとしてのトングの配布など、型破り、掟破りの活動をしてきた堺シュライクス。

 

選手たちも、自分の殻を必死に破ろうとしている。うまくなりたい、NPBに行きたい・・・!そんな選手たちの必死の思いが、プレーを通じて「表現」されていく。

(146㎞/hのストレートを投げ込みスタンドを沸かせた片岡篤志投手)

(死球を尻に受けてこの表情・大神康輔選手)

(生還してこの表情・今井寿希也選手)

(バット投げも美しい・4安打5打点を記録した大橋諒介選手)

 

堺シュライクスはこれで8勝1敗。首位独走中だ。他の3球団も黙って見ているわけにはいかないだろう。殻を破り、堺を食い止めるチームは、どこだ。

 

おまけ

この試合も堺シュライクスマスコットのライパチが来場し、7回裏に堺っ子体操を踊った。

スタンドからは「過去最高の堺っ子体操の出来」との声が上がった。

 

 

「この状況でもたくさんの人に応援してもらえてうれしいパチ」とファンの方への感謝を述べたが、どこか浮かない表情をしていた。

 

「ユニフォーム、みんなと同じのを着れなかったパチ。サイズがなかったパチ…頑張ってダイエットしてユニフォームを着れるようにするパチ!」

 

ライパチも試合を彩る「アート」の一つだ。がんばれ、ライパチ。

 

(文・写真:SAZZY