さわかみ関西独立リーグ 兵庫ブルーサンダーズ 蔡鉦宇(サイセイウ)【side B】

6月13日に開幕した、さわかみ関西独立リーグ。

2カ月遅れの開幕。オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。

第8回は、兵庫ブルーサンダーズの副キャプテン、蔡(サイ)内野手をピックアップ!

 

 

憧れを持って

台湾では日本の高校野球がテレビ中継される。それを見て育った蔡鉦宇 。「チャレンジしてみたい。レベルの高いところで野球をしてみたい―」甲子園、そして日本のプロ野球への憧れを胸に来日したのが2012年。

 

言葉がわからない、上下関係が厳しい、チームメイトとコミュニケーションが取れない…そんな逆境もあった。

 

その年に、先輩たちが出場する試合の補助で一度だけ甲子園のグラウンドに降りた。「ここでやってやろう」と憧れはさらに強くなった。

 

2014年の3月、蔡のいる八戸学院光星高校は、夢であった甲子園に出場した。

「東北大会でいきなり仙台育英高校と当たって、次も花巻東高校と当たって。大丈夫かなと思っていたんですが優勝できました。甲子園で試合ができると思うと何とも言えませんでした」

 

今年、来日から9年目となる。NPBへの憧れを今も持ち続け、プレーをしている。

(蔡鉦宇 -サイセイウ-選手 撮影:SAZZY

副キャプテン

昨シーズン、福島レッドホープスに在籍していた蔡は絶好調だった。8試合で5割近くの打率を記録したが、アクシデントに見舞われた。

 

「右の足首に死球を受けて骨折したんです」

戦線離脱。日本での生活費用のことなどもあり、台湾に戻り治療とリハビリをすることになった。その後、年末に台湾で行われたU-18の野球大会において転機が待っていた。

 

「コーチとして台湾チームに帯同していたんですが、その大会に兵庫ブルーサンダーズが出ていました。高校の同級生のお父さんの紹介もあり入団を決めました。環境を変えて野球をしたかったというのがありますね」

 

チームに合流しすぐ、思いがけないことが待っていた。橋本大祐監督から一本の電話が入った。

「副キャプテンをやってくれないか、ということでした。ビックリしました」

今年の兵庫ブルーサンダーズは若い選手が多い。技術だけではなく経験を伝えてほしいということだった。

 

「やっぱりまだみんな若くて社会に出ていない選手も多いじゃないですか。自分からチームを引っ張らないといけないと思いますし、これも一つの勉強なのかなと思います」

 

キャプテンの仲瀬貴啓、同じく副キャプテンの小山一樹とはよくチームの現状を話し合う。

「考えを3人で話し合います。いいところはそのまま継続できればと思うんですけど、悪いところもある。これってどうなんだろうと思ったらすぐに言うようにしていますね。野球はグラウンドに9人いるので、みんなでやるスポーツですし、チームに貢献できるような行動をみんなに伝えていきたいです」

 

高校時代、「人間性」ということを野球を通して叩き込まれた。一人がよくても、他のみんながよくない。そして普段の行動が野球に表れる。蔡はそれをチームに伝え、橋本監督をサポートしていく。

 

 

開幕戦に思ったこと

6月13日、2カ月遅れの開幕の日がやってきた。6番DHで出場した蔡は、4打席に立って1打数0安打3四球だった。

木村豪コーチに『バッティングに集中してほしい』と言われ、DHでのスタメンとなった。

 

「四球3つというのはヒット3本と同じ価値なので、それはよかったなと思いました」と話したが、やはり気がかりなのはチームの事だ。

 

「とても悔しかったです。あと1本が出なかった。それに、チャンスで打席が回ってきた若い選手の顔を見ると、やっぱり緊張みたいなものが顔に出ているんですよね。開幕戦だし、それもあったのかなと思います」

 

今季多くの選手が入れ替わり、平均年齢もぐっと下がった。チームとして成熟するために、自身もチームもレベルアップを果たしていく。

(2020年6月13日 ガッツポーズをする堺・河村将督の後ろで悔しさをにじませる。 撮影:SAZZY

今季の目標と決意

台湾は球団が少ない※ため、蔡のようにNPBに指名されるため※に留学する選手も多い。もっと上のレベルで、という志は来日した時から変わっていない。

 

「バッティングはソフトバンクの柳田悠岐さんに憧れます、スイングと飛距離がやっぱり違います。あとは、ロッテの田村龍弘さん、阪神の北條史也さん。私が1年生の時の3年生でした。そしてロッテのチェン・グァンユウさん。1年だけ通っていた台湾の高校の先輩でした」

 

募る思いもあるが自身のレベルアップも忘れない。

「バッティングには自信はあります。今季は守備もしっかり取り組んでいます。もっとうまくなりたいです」

 

「チームとしては完全優勝が目標。個人のタイトルで言うと最多安打を取りたいです。そしてNPBにドラフトで指名されたいです」

 

自分自身の事も、チームの事も考え、「人間性」をさらに高め、蔡はさらなる高みを目指していく。

(2020年6月13日 打席によっては一本足で構える 撮影:SAZZY

 

※台湾の球団…2020年より5球団。登録人数も多くはないため、狭き門となっている。

※NPBに指名される…日本のドラフトの制度により海外国籍の選手でも、条件を満たしていればドラフトの対象となる。例は陽岱鋼(北海道日本ハム)、林威助(阪神)、大豊泰昭(中日)、玉木重雄(広島)らがいる。(括弧内は指名球団)

蔡選手の場合は、大学に4年在籍しているため、ドラフトの指名条件に当てはまっている。

 

 

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蔡内野手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!

 

  • 小山一樹(兵庫)・・・肩が強くてバッティングがいい。グラウンドに立つとプレーに集中する

 

蔡鉦宇 プロフィール

1996年2月20日生まれ 右投げ左打ち

八戸学院光星高―拓殖大―福島レッドホープス―兵庫ブルーサンダーズ

 

(文・写真 SAZZY