さわかみ関西独立リーグ兵庫ブルーサンダーズ、小笠原智一【side B】

6月13日、さわかみ関西独立リーグ開幕

コロナウィルスによる開幕延期、選手たちは何を思っているのか。

オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。

第7回は兵庫ブルーサンダーズの小笠原投手をピックアップ!

 

開幕投手

オンライン取材を行ったのは6月10日。その3日後、小笠原智一は開幕戦のまっさらなマウンドに上っていた。19歳の右腕は緊張もどこ吹く風。ストレートとカーブを織り交ぜながらテンポよく投げ込み、6回2失点、68球、4奪三振、あとは打たせて取っていった。

「出来は60点ぐらいでしたがストライクゾーンで勝負できたので自信にはなりました」

満足しきっていない点はあるが、大役を任された後のその顔は充実感にあふれていた。

(2020年6月13日、試合後に『あの時俺が打っていれば・・・』と謎の後悔を口にしながらやってきた小笠原 撮影:SAZZY

兄のボール

兄は甲子園優勝投手、中日ドラゴンズで開幕投手を務めたこともある小笠原慎之介。野球の話はほとんどしないということだが、正月などにキャッチボールをする機会があった。

「軽く投げていてもボールが重いです。ブルサンに来てからキャッチボールを他の人ともやりましたが、ボールが速いと言われている人でも『ただ速いだけ』と感じてしまうぐらいです。カーブも受けてから腕が持っていかれるぐらい落ちていくんで、あのボールはどうにかして投げたいなと思うんですけどね」

そのボールはどうやったら投げられるようになるのか。それに少しずつ近づこうとしている。

クラブチームから

2019年、所属していたクラブチームには関西にゆかりのある人物が在籍していた。監督は吉田篤史※。2017年に和歌山ファイティングバーズの投手コーチを務めた。そして岩城孝徳、金城力樹。BFL時代のリーグを盛り上げ、2018年には和歌山ファイティングバーズを優勝に導いたバッテリーだ。

「金城さんとはよくキャッチボールをしてもらったんですが、体重の移動やリリースの仕方を学びました。キャッチボールをしていて手元でボールが落ちなくなりました。明らかにボールの質が変わったと思います。岩城さんとももずっと野球の話をしていましたね。打者のタイプ別の打ち取り方とか、投球の組み立て方とか、そういったことをよく話していました」

人数も少ないクラブチームにおいて、「自分に謙虚で、雑用なども嫌な顔をせずやってくれた」と岩城は振り返る。練習も土日しかない中、試合や練習で指摘されたことを翌週に見事に修正してくるなど、小笠原は頭角を現していったが、チームは休部することとなる。

「吉田さんに相談したら、このチームを紹介していただきました」

その縁もあり小笠原は関西にやってきた。

(2020年6月13日 好投し出迎えられる小笠原 撮影:SAZZY

見つけた武器

兵庫に来た小笠原。橋本大祐監督からは、右打者のアウトコースのストレートを評価される一方、フォームを一目見て「軸足に体重が乗っていない」と言われた。それまで模していた中日・藤嶋健人の投球フォームをやめた。投球練習中にもちゃんとしたボールが投げられているかを都度キャッチャーに確認する、その中でいいと思ったものはすぐに実践している。

「いいか悪いかは別として、自分の体がまだ出来上がっていない(成長が止まっていない)ので、以前聞いたことがいつかフィットすることがあると思うんです。今合わなくてもその時に合うように引き出しとして持っておきたいです」

そんな中、クラブチーム時代から取り組んでいたことが結果となって表れた。

「高めのストレートですね。元々ポップフライを打たせようとするピッチングをしていたんですが、実戦で投げているうちにそれが有効だと感じました。」

オープン戦と練習試合で失点をしたのも1試合だけ。そのボールに手ごたえと自信を感じていた。

そしてポップフライを打たせることについては吉田氏の指導が影響していた。

「ゴロを打たせてアウトを取ろうとすると、『取る、投げる、取る』という3つの動作が発生しますが、その分エラーになる可能性も3点発生することになります。でもフライなら取るだけなので、打ち取ってエラーになる確率が一気に低くなります。オープン戦でもストレートがしっかり通用したので、フライを打たせて行きたいと思います」

(2020年6月13日 開幕のマウンドで堂々と投げ込む小笠原 撮影:SAZZY

今季の目標と決意

開幕投手を経て、次に目指すのは防御率のタイトルだ。

「そのためにもっとストレートを磨きたいですし、変化球でストライクを取れるようになりたいです」

19歳。同世代のスーパースターの活躍には目もくれず、自分の課題と向き合う日々が続く。自分は自分。見据える目標はNPB入りだ。そのために、引き出しの数を少しでも増やしていく。

 

※吉田篤史氏は2020年から四国IL徳島の監督

 

 

小笠原投手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!

 

  • 小山一樹(兵庫)・・・配球がよく合うので安心感がある。そうするとテンポよく投げられる。

 

小笠原智一プロフィール

2000年12月15日生まれ 右投げ左打ち

藤沢翔陵高-郡山アスレチックスBC-兵庫ブルーサンダーズ

(文・写真 SAZZY 取材協力 岩城 孝徳