さわかみ関西独立リーグ堺シュライクスのナックルボーラー、佐野太河【side B】

新型コロナウイルスの影響で開幕延期―
前代未聞の事態に、今選手たちは何を思っているのか。
オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。

第5回は堺シュライクスのフルタイムナックルボーラー 佐野太河投手をピックアップ

西船橋のドトールで

「君の夢を叶えるための応援したい」

2019年11月。メジャーリーガーを目指しワールドトライアウトの受験を終えた佐野太河は、堺シュライクスオーナー、松本祥太郎からそう声をかけられた。場所は千葉県、西船橋にあるドトールだった。

「北海道のリーグからも声をかけられたのですが、松本オーナーからそういう言葉をかけていただいたので、堺に決めました」

すごいナックルを投げると騒がれた大学3年生の右腕は、こうして大阪にやってきた。
特に対戦したいと思う同世代の選手はいない、趣味はトレーニングというストイックな姿勢で野球に取り組んでいる。

(ナックルの握りを披露する佐野。爪を軽くボールに当てて投げるのがコツ)

ナックル

「大学2年生までは普通の投手でした」という。ほかの変化球も投げていたが、意外なところにきっかけがあった。
「NHKの球辞苑という番組で、ティム・ウェイクフィールドがナックルの投げるコツを紹介していていたんですが、それでコツをつかんだ感じでした」

これまで遊びで投げていたナックルが急激な変化を見せ始めた。そこから日本でもまだほとんど例がないフルタイムナックルボーラーへの道を進み始めた。※

日本で手本にできる選手は少ないが、ウェイクフィールドやR・Aディッキー、スティーブン・ライトらの動画を見て手本にしている。
「もっと精度の高い無回転のボールを投げたいですね。ストライクゾーンにしっかり入れることができれば抑えられると思っています」

課題と藤江コーチからのアドバイス

練習中は毎回ブルペン後方にカメラを置き、投球動作を録画している。撮った動画の一部はTwitterで公開もされている。

(2020年3月3日 カメラの前で投げる佐野太河)

「毎回テーマをもって練習しています。例えば体の開きだったり、フォームと感覚の確認のためですね。Twitterに動画をアップしているのは、当初は見てほしいっていう思いがあったんですが、成長の記録として残すためでもありますね。フォームをしっかり意識すれば精度も上がってくると思います」

周りの選手ともコミュニケーションを取りながら練習をしている。キャッチャーからはどのようなボールの変化をしているのか、どの高さに入ったのかなどを確認してもらっている。

藤江均コーチからも投球フォームや下半身強化なども指導を受けている。

(2020年2月14日 佐野の投球を見つめる藤江コーチ)

ある日の一幕。藤江コーチがもう少し腕を上げて投げてみるのはどうかと佐野に提案していた。「俺もやったことないからわからへんけどいろいろ調べたり(ほかのナックルボーラーの)動画見た感じやねんけどな」と言いながらも下半身の使い方などをアドバイスしていた。試行錯誤はいろいろ続いている。

「今はいろいろやってみて試しています。だめなら戻せばいいですし、自分にとって何がいいかを見極めたいです」

今季の目標と決意

話はワールドトライアウトに戻る。その時は対戦した打者すべてがすごいと思ったという。
「白根尚貴さん(四国IL愛媛コーチ)や速水隆成さん(BCリーグ群馬)にはいいと思ったナックルも打たれました。スイングスピードもすごかったです」

登板したオープン戦も初登板は四球から大量失点を喫した。だが、そのあとの登板は無失点に抑えた。
「大学とかと比べるとやはりレベルが高い世界だなと思いました。でも、ストライクを入れることができれば、勝負できると思います」

現在は制球力の向上、そして、緩急をつけるための「2種類目のナックル」を実戦で使えるように磨いている。
「まだ打者とそれほど多く対戦していないので、先発して多くの打者と対戦したい。目標は最多勝です」

その目標の先にはNPBやMLBを見据えている。ボールは揺れても志は揺れずに前人未到の境地を佐野は進んでいく。

※日本のフルタイムナックルボーラーの例
NPBでは98年から2年間大阪近鉄バファローズに所属したロブ・マットソン、07年に広島東洋カープに所属したジャレット・フェルナンデスがいる。

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佐野太河投手プロフィール
1998年11月16日生まれ 右投げ右打ち
浜松南高―千葉大学―堺シュライクス

(文・写真 SAZZY)