新型コロナウイルスの影響で開幕延期―
前代未聞の事態に、今選手たちは何を思っているのか。
オンライン取材で今、過去、そして今後のことを聞いてみました。
第2回は和歌山ファイティングバーズの新キャプテン、西河捕手をピックアップ!
まだ野球ができる
「結果が出なければ野球を辞めないといけないかと思っていたんですが、『まだ野球ができるんだ』と思えた1年でした」
名門クラブチームNOMOベースボールクラブを退団し、トライアウトを受け和歌山ファイティングバーズに入団した西河洋樹。チームの中軸としてチームトップのホームラン4本を放ち、リーグ選抜ではオリックス戦でホームラン、通算でもNPBの投手相手に打率.375もマーク。打者として、キャッチャーとしても十分すぎる成績を残したが、それでも西河がシーズンの終わりにそんな思いを持ったのには理由がある。
「だって開幕戦でホームランを打つまで、これまでの野球人生でホームランというホームランを打ったことがなかったんですから」
運命を変えたひと言
高校時代はショートを守っていた。大学時代とクラブチームの時に短期間キャッチャーを守った。2018年11月、トライアウトを受けるにあたり、よりチャンスを掴むためにキャッチャーで勝負することにした。
(撮影:@fbbsbush)
「独立リーグには前々から興味がありました。もちろんNPBに行くために近道になるかなという思いはありましたが、活気があっていいなと思いました」
トライアウトに合格し、和歌山ファイティングバーズへ。そこで開幕までの間に、西河は自分のバッティングを大きく変えることを決意した。
「誰に教わったとかではないですけど、メジャーリーグの動画とかを見てバッティングフォームを変えてみました。そうするとだんだん良くなってきて。開幕戦前に川原監督に『力が入りすぎているから抜け』と言われて、打席に入る前にフーッと深呼吸するようにしたら、ボールが本当によく見えるようになって打てるようになりました」
昨年の開幕戦、3点を先制された3回表。花園セントラルスタジアムのファンはまだ永田雅樹(06ブルズ)のホームランに沸いていた。その興奮冷めやらぬ中、西河はプロ初打席に立った。草間サトル(06ブルズ)のボールを引っ張りこんだ。これが「初めて打ったホームランらしいホームラン」だった。
その後もホームランを打ち、前半戦はホームランランキングを争った。怪我人の出る中、「かつての本職」である内野を守ったり、守ったことのなかった外野手も経験した。リーグ選抜も毎回のように選出された。
「守備は全然問題なく入れました。バッティングは後半ガタガタってきちゃったんですけど、本当にここまでできるなんて思っていなかったです。だから今年はできるところまでやってやろう思ってます。やるからにはホームラン王になってみたいなと思います。目指せるなら、目指すところまで行きたいと思います」
(2019年7月25日 リーグ選抜戦で打席に立つ西河)
埋められない差はない
2019年5月15日、オリックス・バファローズのファームチームとの対戦。西河は9回に漆原大晟からホームランを放った。そのことを振り返ってこう語る。
「投手のスピードやキレは今まで見たものとは全く違うものでした。打った感触も今まで感じたことのない感触でした。ただ、しっかり振って当ててホームランにできているので、到達できないレベルではないのかなと思います」
クラブチーム時代には別の独立リーグや社会人のチームとも対戦している。
「技術はともかく、少なくとも力の差はほとんどないと思っています。自分がどこを目指してやっているか、どこに気持ちを置いているか、メンタルの差ですね。相手がプロでも超えられないことはないと思っています。同じ人間なんですから」
(2019年6月5日 ロッテ浦和球場にてブルペンから戦況を見つめる)
今季の目標と決意
今季からチームのキャプテンにも就任することになった。
「今季から運営会社も変わりましたし、これからもずっと続いていくチームだと思っています。だから今年は応援してくれる人や、地元、地域に愛されるように、活気のあるチームにしていきたいです。そのためにはもちろん勝たないといけない。勝つために個人としてはホームラン王を取りたい。チームとしては優勝が目標です」
オープン戦、ファイティングバーズは非常に好調だった。「野球をやるしかない」環境であることもあるが、「地域のために野球をやる」という意識が浸透していることも好調の要因だろう。西河本人が体現したように「超えられない壁はない」のだ。優勝を狙うチームの中心として今も限られた時間の中でトレーニングを続けている。
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西河捕手が選ぶ さわかみ関西独立リーグ この選手がすごい!
- 小山一樹(兵庫)・・・同じキャッチャーとして打撃も肩もすごい。見てても打ちそうな雰囲気がある。
- 吉田亘輝(堺)・・・コントロールとスライダーがいい。去年何度も対戦してライバル心を持っている。どこまで成長するか期待したい。
- 蜂谷崇紘(和歌山)・・・とにかく肩がすごい。肩だけならリーグ1だと思う。肩きっかけで興味を持ってあげてほしい。
西河洋樹捕手プロフィール
1993年11月15日生まれ 右投げ右打ち
三田松聖高―兵庫大学―NOMOベースボールクラブ―和歌山ファイティングバーズ
2019年成績 43試合 打率.285(158-45) 4本塁打 18打点 盗塁14
(文・写真 SAZZY)