野球を観る喜び、見られる喜び 堺シュライクス対和歌山ファイティングバーズ

制限付き入場

コロナウィルスの感染拡大から「無観客試合」という言葉がにわかに出てきた。どんなスポーツでも観客を入れずにスタートする…ということに慣れきっていたが、6月14日、堺シュライクスのホーム球場の一つ、南港中央公園野球場で、ついに観客を動員することになった。

 

試合前に夏凪一仁球団代表は「市や球場の方針や対策にのっとって準備をしてきました。お客さまにはご迷惑をおかけするかもしれませんが、楽しんでもらえればと思います。やっていい範囲で柔軟に動いていきたいと思います」と語った。

 

今回堺シュライクスがとった対策は多岐にわたった。

  • インターネットによるチケットの事前販売
  • 入場時に検温
  • 大阪コロナ追跡システムへの登録
  • 手指の消毒
  • マスクの着用
  • 座席間隔をあけての着席
  • 大声を出しての観戦禁止

 

それに加え、スタンドの上部の座席を立ち入り禁止にし、スタッフにはフェイスガードを着用させるなどの対策が取られた。

(立ち入り禁止区間を作るためにロープを張る堺シュライクススタッフ 畑さん)

(検温・消毒ブースを作成した堺シュライクスインターンスタッフ)

 

午前10時40分、予定より少し開門が遅れたが、野球を観ることを今か今かと待ち望んでいたファンの方々が入場した。

(入場するファンの方々)

(コロナ追跡システムに登録するファンの方々)

(検温の様子)

 

一度に入場できる人数を10人とするなど、蜜対策もぬかりない。公式サイトで販売していた120枚のチケットは完売。イニング間にアナウンスやスコアボードに掲示を出し、消毒の実施や密集しないように呼び掛けていた。

 

和歌山ファイティングバーズのリスタート

この試合は球団体制が変わった和歌山ファイティングバーズの2020年初戦となった。田所洋二球団代表はコロナウィルスによる開幕延期期間についてこう語った。

 

「来るべき開幕に向けて粛々と準備をしていく…と言えば簡単なのですが、実際には選手のコンディションが心配でしたし、選手のアルバイト先が休業になりアルバイトがままならない事態にもなりました。」

 

そんな中、地元の農家の方や、スーパーマーケットのオーナーから仕事を紹介してもらうなどの支援を受けた

 

「地域の皆様からの応援で光が見えた時期でもありました。これまでも地域貢献を掲げていましたが、実際に何をしたらいいのかはわからないままでした。地域の皆様からの応援で野球ができると実感できた2か月間でした」

 

その意識は選手の間にも実感として意識づいている。「選手の夢が地域の皆さんの夢と言われるよう、活動していきたいです」

 

川原昭二監督も「野球をできる喜びを感じてほしい。優勝を目指すとともに精神的にレベルアップしてほしい」と語った。

 

また、和歌山ファイティングバーズに「紀州闘鶏会」という応援団も新たに結成された。

「昨年の8月から今年に向けて準備をしてきました。もちろんチームが勝つことに越したことはないですが、周りの方にも楽しんでもらいたいですし、そういうところで少しでもチームを後押しできたらと思います」と団員の方は抱負を語った。

(紀州闘鶏会の横断幕)

 

マスコットデビュー戦

この日、7回裏の攻撃前に、堺シュライクスマスコットキャラクター、ライパチが初お披露目となった。堺っ子体操をファンの前で披露すると、スタンドから拍手が起こった。

 

デビューについてライパチ本人に話を聞いた。

 

「堺シュライクスに新しい仲間として加わることができてうれしいパチ!デビューは2カ月遅れることになったけど、この期間はファンの人の前に立つことを考えてずっと練習していたパチ!」

 

人知れず練習を積み重ねたライパチ。堺っ子体操をするためにグラウンドに出た時に、決意を新たにした。

 

「グラウンドからスタンドを眺めると人数制限があったとは思えないほど、たくさんの人がいたなと思ったパチ。緊張したけど力になったパチ。だからこの状況が落ち着いたら、もっともっとたくさんの人に来てほしいと思ったパチ!新しいシュライクスの楽しみとしてボクも見に来てほしいパチ!」

(お客さんに向けてサムズアップでアピールするライパチ)

 

応援の力・野球の力

「自分の力じゃないものを感じました」堺シュライクスの河村将督は声援についてこう語った。他の選手たちも、気合いが入った、うれしかったと同様に語る。

「本当にありがたかったです」と話したのは、和歌山ファイティングバーズの大前拓也。「和歌山ファイティングバーズには去年まで応援団がなかったですし、こうやって拍手や応援のメガホンの音が聴こえる中でプレーができてよかったです。和歌山でもファンの方が入場可能になる時がとても楽しみです」

(BFL時代から毎年在籍している唯一の選手 大前拓也)

 

また、ファンの方からも同様に

「スタンドに上がって、グラウンドが見えた時に泣きそうになりました。やっと始まったんだなと思いました」という声を多く聞いた。

 

試合後、夏凪球団代表は「お客さまがいる中でプレーしたことによって、選手も刺激になったのではないかと思います。くら寿司スタジアム堺の試合についても球場と話し合いしながらになりますが、見ていただけるのであれば、選手たちには暴れまわってアピールしてほしいです」とまとめた。

 

NPBより一足早く観客を入れた試合は、グラウンドもスタンドも、たくさんの笑顔で溢れていた。早くスタンドによりたくさんの人が訪れる日を願ってやまない。

 

 

(取材・文・写真 SAZZY